バレンタインデーも過ぎましたが、来月にはすぐホワイトデーですね。また、すぐに卒業や進級、人事異動など、出会いと別れの季節もやって来ます。年始の年賀状から始まり、年度末まで学生や若者の間には贈り物やメッセージで想いを伝える時期が続きますね。
何を伝えるか、誰に伝えるかも大事なポイントですが、どう伝えるか、どう受け取ってもらえるかも考えないと、せっかくの想いも成就しないでしょう。筆者も、差出人不明で目的も分からず、本当に自分宛だったかも分からないチョコレートを、小学生の頃に受け取った記憶があります。そういう場合の食品は、口に入れずにそっとゴミ箱へ捨てざるを得ませんよね……。
伝えたい想いや緊張感だけが迸ってしまい、気持ちや感情を爆発させてみたところでスーパーサイヤ人に変身することもないし、必殺技が発動して相手を惚れさせることにも繋がりません。きちんと手順を踏んで、相手が受け取りやすいように発信しなくては、返事のボールも返ってきません。
キャッチボールをするつもりがない、投げたら投げっぱなし、伝えたら伝えっぱなしで良いというのならそれでも構いませんが、ビジネスにおける情報発信の場合、Webマーケティングの場合はそうも行きませんよね。
伝えるための工夫や情報を組み立てる際のポイントについて、筆者なりの考えをお伝えするので、もしお困りの方がいらっしゃいましたら、参考にしてみてください。それでは一つずつ解説していきましょう。
目次
受け取り手次第かつ、自由を尊重すべし
伝えたい側、つまりアナタが考えた順番、思いついた順番に情報を送り出したとしても、受け取って欲しい相手がどうするかは、相手次第であり、なおかつ相手の自由意志が尊重されます。例えばアナタが、「A、B、C」の順番で伝えたとして、相手が「C、A、B」の順番で組み立てるかもしれないし、Aを取りこぼして「B、C」だと受け取るかもしれません。全て見なかったフリをして、完全に無視する自由も相手には認められます。
「A、B、C」の順番で伝えるからといって、必ずしも相手が「A、B、C」の順番で受け取って、再現するとは限りません。もし、そうしてほしいのであれば、伝える側が工夫を重ねる必要があります。
例えば、最初に全体の設計図を提示し、それを受け取ったことを確かめてから「A、B、C」のパーツを順番に送る、または「A、B、C」の順番でしか組み立てられないように、連結部分の設計したり、行動心理やアフォーダンスを活用し、「自然とそうなる」ように工夫するといった方法も考えられます。
具体的な手法は後ほどお伝えしますが、まずは理解しておきたいのは、伝えたい相手というのは、言語能力が未熟な我が子と、それを理解した上で受け取ってくれる親のような関係ではない、という点です。もっとドライでシビアな間柄であると心得ましょう。中途半端な「甘え」が介在すると、せっかくの想いが伝わらない可能性が高まります。
自分に厳しく、他人に寛容であること。相手の自由を認めた上で、伝わらなかったら、全て自分に責任があると考えましょう。まずは、この基本姿勢を保つことが、情報を効果的に伝えるための第一歩です。
ノックやキャッチボールみたいなイメージで
具体的な手法へ移る前に、前提をもう一つお伝えします。
それは、情報を送ったり受け取ったりする際のイメージとして、伝えたい想いや言葉をボールに見立てたノックや、お互いに投げ返し合うキャッチボールのような心づもりをしていただきたい、ということ。
ノックでもキャッチボールでも、ボールが多少逸れるぐらいなら相手はキャッチしてくれるでしょう。しかし、あまりにも取りにくいボールなら、相手はボールを取りきれません。気の置けない仲間が相手のキャッチボールなら、大暴投でも「しょうがないな」と拾いに行ってくれますが、厳しい先輩やコーチの場合、「ここに来ないなら、キャッチしない」と言われるでしょう。
キャッチボールの場合は、相手が取りやすいところへ投げるのが基本です。相手を思いやり、できるだけ負担をかけない工夫が求められます。
ノックの場合、キャッチボールよりはチャレンジングな打球が許容されるかもしれません。ただし、相手が全く取れない場所へ飛ばしたり、無理な動きを強いると「無理だ」と匙を投げられる可能性もあります。また、一度に多くの打球を取らせようとすれば、処理しきれなくなるのも当然です。
最初は相手が受け取りやすいボールから始めて、徐々に難易度を上げる。相手が準備できていないうちに難しいことを要求しないというのは、イメージしやすいでしょう。
ちょっとぐらいなら、難しくても相手が動いてくれる可能性がある。ただし、入念な準備が必要であり、前後の流れや数量にも気をつけねばならない。これが次のポイントです。
基本は天地人、大から小
別の言い方をするなら「逆ピラミッド」というか「結論から伝える」ということ。同時に、理解しやすいように「前提から話す」にも通じる考え方でしょうか。
「天地人」というのは映像作品における脚本、シナリオの技法で、「天:時代、地:場所、人:人物」を指します。つまり、「いつ・どこで・誰が」をまず伝えることが基本となっています。
例えば、「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へ洗濯に行きました」は童話『桃太郎』の冒頭ですが、「天:むかし、地:不明だけど里山と川が近い、人:おじいさんとおばあさん」となっています。
漫画の作り方の場合、「キャラクターが大事」と言われますが、累計発行部数で世界一を誇る尾田栄一郎氏の『ONE PIECE』は、主人公のモンキー・D・ルフィではなく、「海賊王」の処刑や「大海賊時代」の幕開けという舞台設定を先に提示しています。
キャラクターよりも大きな舞台設定、そしてリアリティラインの設定を先に提示することで、その先の話を受け入れてもらう素地を整える、という考え方です。
結論や、これから伝えることの骨子を目次で伝えると「今から何の話をされるのか」を受け入れる余地ができますし、「天地人」が最初に提示されると、「大体どんな話か」も予測しやすくなります。『ONE PIECE』の冒頭で「海賊の話をするんだな」と考えるのが自然であり、緻密な推理物や山村部の因習村を舞台にした和風ホラーが展開するとはあまり思いませんよね。
昨今の作劇は「とにかく転がせ、驚かせて気を引け」という考え方もありますが、「今、なんの話をしてるんだっけ」が受け手の中で整わないうちに、勢いだけでキャラクターやストーリーが動き出してしまうと、受け取る側は落ち着けません。情報を受け取った後に落ち着くための踊り場、受け取った相手がボールを握り直す時間、消化するための時間も必要になります。
だから、まずは大きいものから伝えて、徐々に小さいところ、具体的な込み入った話へ入っていくというのが基本になります。受け手にとって予想外すぎてしまうと、「取れないノック」になりやすいので、「受け手が背伸びしたら、問題なく取れる」ところを見極めることが肝心です。
また、天地人を先に伝えることで、どっちが水平でどっちが垂直の上下になるのかといった、基準も伝えやすくなります。基準がどうなっているかを伝えないままだと、その先の話も組み立てることが難しくなります。
北が上になっている地図なのか、スケールがミリメートルなのかヤード・ポンドなのかの前提を整理、共有することもお忘れなく。
伝える側はカメラマンであり、ガイド役
情報を発信する側、伝える側として忘れてはいけないのは、その話の主導権を握っているのは伝える側にあるということ。もちろん、受け手には相槌を打つ権利や、話を遮って自分の意見を主張する権利もありますが、文章やコンテンツを通じて想いを届ける場合、その話がどんな筋道を通ってゴールに向かうかをガイドするのは伝える側の役目になります。
情報を発信する側はハンドルを握る運転手であり、バスガイドです。受け手にどんな文章やどんなイメージを届けるか、その全てを握っています。文章であっても、視覚的なビジュアルを伴うコンテンツであっても、それは変わりません。
何に焦点を向けるか、何を切り取るかも伝える側の役割で、ハンディカムやボディカムのPOV、主観カメラを持っていると考えると、何をすべきで、何をしてはいけないかがわかりやすいでしょう。常に客観視できる定点カメラなら、天地人や伝え方の順番にも頭を悩ませることはありませんが、主観のカメラの場合、様々なことを考慮しなければ、伝わりやすくなりません。
主観カメラでまず考慮したいのは、「手ブレ」や「画面酔い」。つまり、今どれにカメラが向いていて、何を見せているか、何を伝えているかが伝える側に整理できていないと、受け手にも混乱が生じ、受け取りにくい情報になってしまいます。
視点や話の順番がブレたり、彷徨ったりしてしまうと、受け手にとって理解しにくくなり、「何の話?」と迷ってしまうでしょう。だから、「今、何の話をしているのか」をはっきり自覚し、どのスケールの話をしているのか、どの段階の話をしているのかを把握することが肝心です。
例えば、これまで局所的な話をしていたのに、急に違う時系列や別の場所の話に飛んでしまったり、建物の外観やキャラクターの輪郭を描写していたのに、無関係なキャラクターの会話が差し込まれたりすると、理解は難しいでしょう。また、前提となる話を共有していないのに、それを既に伝えたつもりで詳細な話を進めたり、場面転換を忘れて全く違う話題を持ち出してしまうのも、よくある問題です。
特に、文字だけで情景やセリフも含めて伝えようとすると、「今、どこに該当する文章を書いていたんだっけ」と書き手自身が彷徨うこともしばしばです。天地人のどの段階に言及しているのか、また小さな話をする前に大きな話はしていたかどうか、今、どんな角度から何を読み手に示しているのかを自覚していないと、受け手に「画面酔い」を引き起こしてしまうでしょう。
文章で難しいのは、視覚的なビジュアルのように「今はキャラクターの輪郭を書いている太い線」や「背景の山の淡い稜線」や、「キャラクターの表情、目の中に写っている反射を点描で描いている」といった役割の違いなど、いわゆる「地の文」や動きに関する言葉なのかも、伝える側が意識して使い分けないと、全てを同列に扱ってしまうことになります。
場面転換から内面描写、一見して繋がりのない要素まで自由自在に描ける反面、その早さや不安定さも理解しておかないと、「視点が複雑すぎる自主制作ホラー作品」に陥りやすいので、何を描写しているのか、何の話をしているのかを明確に伝えたい場合、主観カメラを持っているつもりで、受け手に対する全ての責任を負っていると自覚しておきましょう。そうすると、様々な混乱や、後々のトラブルを回避しやすくなるかもしれません。
迷わせないように、シンプルな一本道で
伝えたい想いが強い時、また伝えたいことがいっぱいある時、必ず遭遇するのが「全部伝えたい」というトラップ。アレもコレも伝えたいからと、優先順位も付けずに全て詰め込んでしまうと「情報の鬼盛り」になるのはまだマシで、「味が迷走しているトルコライス」や「混色の果てに待つ汚い黒」が一般的でしょう。
「町中華で頼みすぎてしまったアラカルト」や「お子様ランチ」に収まるならまだしも、ジャンルも一品一品の味付けも主張が強すぎて、胸焼けしそうなメニューとなってしまいます。こんな時は、せめて主従を決めて、「半チャーハンとラーメンのセット」ぐらいに絞るか、「甘辛」や「甘酸っぱい」と味付けの方向を定めて、他の調味料は控えた方が良いですよね。
可能であれば、「どんな料理だったか」や「どんな味がしたか」を覚えてもらえるようにしたいので、ラーメンならラーメンだけ、トルコライスを極めるならトルコライスで、ワンプレートに盛り付けるメニューのみに絞った方が、相手の印象に残りやすくなるでしょう。
情報を発信する時、伝える時、また受け取った後に、相手に元の伝えたかったことを再現して組み立ててもらう時にも、相手が迷わずに済むよう、可能な限りシンプルにする事が肝心です。設計図があっても、途中で「Aにも、Bにもできる」と選択肢や分岐が提示されていたら、どっちにするか迷ってしまいますからね。
「迷うこと」を楽しませたい場合や、バッドエンドやトゥルーエンドといったシナリオ分岐を目的としたエンタメなら話は別ですが、ビジネスにおける情報伝達で、そういう手法はまず取らないでしょう。相手にどうして欲しいか、伝える側から選択肢を用意することはあっても、何を理解して欲しいか、どんな反応をして欲しいかは、基本的に一つに絞られるはず。
伝えたい事が沢山あったとしても、優先順位をしっかりつける、または伝えたいことを融合させた新たな選択肢に絞る(例えば、麻婆カレー?)のがポイントです。可能なら一つに絞り、その補足やサブエピソードとして、どうしても伝えたいことを添える。そうやって情報を整理し、優劣や順番を整えることで伝わりやすくなるでしょう。
一度に複数のことを伝えようとしていないかどうか。一回のノックで複数の球を飛ばしていないかどうか。右へ目一杯走らせた直後に、背中側へ取れない打球を飛ばしていないかどうか。毎回、ボールが受け取りやすいものになっているかどうかを意識して、情報設計をしてみてください。
受け取り手を迷わせない、酔わせないBBN
BBNでは、伝えたい事が沢山あってもすんなり伝わるような情報設計、Webサイト設計を得意としています。お客様に「その手があったか」と膝を打っていただけるような設計を心がけ、情報を発信する側は納得しやすく、受け取る側も迷わず酔いにくい、最適な情報設計をご提案します。
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