紙とペンで第一宇宙速度へ到達しよう

長谷川 雄治
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大学生の頃、身の回りにいた「書けない」人は、書いては消すの堂々巡りに悩んでいました。彼と同様に、「書けるのに書けない」で悩む人の中には書いては消すを繰り返して前に進めない人もいるのではないか、となぜそうなるかの理由や解決方法について、物理等のモチーフを借りて語ってみました。
ポイントは摩擦と慣性、それから第一宇宙速度という「書く」ためのお話。

書くと考えるを同時にやるのは避けましょう、「考える」を暗算でするのは避けて筆算にしましょう、文章や思考を広げるための作業と磨き上げる作業を同時にやらないようにしましょう、とお伝えする記事を、先日noteで公開しました(https://note.com/bbns/n/n273aef01ab64)が、それでもやっぱり書きにくいという方もいらっしゃるかと思います。

今回は、筆者の経験や周囲で見聞きした書きにくさに繋がる要素を元に、少し違う角度から考える記事をお届けします。書きたい気持ちはあるけど空回りしている人、なぜか書きあぐねている人に、何かしらの参考になりますと幸いです。

目次

文章ややる気にも、摩擦や重力が作用する

書きにくさを解消する具体的なお話をする前に、あくまでも筆者個人の体感、偏見から来る考え方をお伝えすると、文章を書くときややる気といった精神的な分野でも、慣性の法則や自然界に存在する四つの基本的な力、強い力、弱い力、電磁気力、重力の影響を受けると考えています。

動いているものは動き続ける。静止しているものは静止し続ける。静止したものが動き出す時に必要な力、静止摩擦力は動摩擦力より大きくなるのが一般的です。また、熱力学の世界で第二法則やエントロピー(乱雑さ)の増大が起こるように、エネルギーや速度は高い方から低い方、より安定する方へ動いていきます。

なぜ、よく分からない物理の話をいきなり述べたのか。
それは文章を書く際にも同様の事象が起こるから。特に、書き始めは中々筆が進まないとか、そもそも考えすぎて思いつかないというのもありますが、それと同程度に起こりやすいのが、書いても消すを繰り返すこと。

考えに考えて一文をやっと捻り出したのに、書いたことが気に入らなくて手戻りを起こし、書き換えたことが原因になって、そこから先をもう一度書き直すことに繋がる。これで大丈夫と思って前へ筆を進めたいのに、やっぱり気になって戻ってしまう。いつまで経っても同じ場所、似たような場面から先へ移れない、停滞が発生します。それも、ある程度書き進んだ段階ではなく、初期の段階。どっちへ向かって書こうか考えながら筆を走らせているタイミング、文章を展開する先を見極め切っていないタイミング、小説なら大事だと言われている冒頭の部分付近で起こりがちです。

道筋やガイドラインとなる文章がある程度の量に達し、全体像がはっきりと見えてくる段階では、書いた内容が自己を肯定する材料となり、筆の進みが早くなります。しかし、読者を惹きつけるために大事な部分だと頭で理解しているからこそ、最初の一歩は中々踏み出せないことが多いです。

糸口さえ掴めば文章も思考も広がり、進むべき方向が見えてくるのにと感じている時ほど、最初の段階で同じ場所に留まり続けてしまうことが起こりやすいと考えています。

これはまさに慣性の法則というか、静止摩擦に似た作用が働いて、エネルギー的に低位の状態、脳も省エネモードで動くために都合のいい状態を保とうとしている現象にも見えてきませんか? 筆が進んで興が乗ってきたら、脳はエネルギーを消費して思考を展開し、未知の世界を想像して言語化しなければなりません。生き延びるためには、できるだけエネルギーを消費せず、動かない方がいい。野生動物としてそうやって進化してきた人類も、面倒臭いことは極力避けたくなるのが自然。消費するエネルギーが少ない状態、安静に寝ている状態を保ちたくなるのは当然のことです。

書き始めるタイミングは特に、動き出すための必要な力が大きく、静止摩擦や重力を振り切るだけの力、エネルギーが必要です。地表を離れ、壮大な思考の外宇宙へ到達するためには、まずは成層圏を超えた衛星軌道、宇宙へ到達するだけの速度、第一宇宙速度へ達しなければなりません。同時に発生する強烈なGに耐え、宇宙へ飛び立つための筆者なりのヒントを、いくつかご提示しましょう。

消せないペンでとにかく前へ

大学生の頃、講師に言われてハッとしたのは「書いている時間より消している時間の方が長い」というアドバイス。鉛筆やボールペンでさっと書いたのに、消しゴムで書き直す時は倍以上の時間を掛けてしまいますが、間違いだと思えば同様に持っているペンで上から打ち消し線を引いて、横や下に訂正を書く方が早い、と。

学科試験や清書が必要な文書、図案であれば間違いを綺麗に消せた方が良いですが、大学生や社会人ともなると、板書を一言一句間違わずに書き写すノート作りから、自分用のメモを残すためのノート作りに変化し、もはや消せるペンも消しゴムも出番はほぼないと言えます。

そして、綺麗に書くことや細かく書くことを気にする段階から、しっかり書けること、着実に書けることへ軸足が写り、製図家でもない限り、細いペンから太いペン、筆圧が小さくてもはっきり残せる柔らかめのペン先、インクへ変化すると思われます。0.5mmから0.7mmで、たった0.2mmしか変わらなくても、さっと線を引いた時にきちんと筆跡が残るかどうかは段違い。シンプルな構造でどこでも使える鉛筆を選んだり、HBから2Bや4Bを選ぶようになったりします。

早く精緻に考える場合は細くて硬い書き心地の方が向いている気はしますが、書き始めで柔軟に思考を広げたい場合は、太くて柔らかい方が向いている気がするので、そういった観点からも、ペンの選び方、紙の選び方は大切になってきます。

それと同時に、書こうと本気で思った時は、消せないペンを選ぶこと。消すこと、戻ることに時間を使わず、絶対に前に進むという意思、間違っていても後ろを振り返らない気持ち、何度でも書き直す心構えで紙や原稿用紙と向き合うこと。

何度でも書き直し、やり直す。自分が一回書き残したものを元にもう一度考える方が自然と客観視できますし、暗算状態を脱却して筆算の状態で思考を巡らせることもできます。

不退転の決意を持ち、多少気になることがあってもとにかく筆や思考を前へ進めましょう。
途中で破棄することになっても、そこまで進んでくれた文章や思考は斥候や水先案内人となり、先が見えない状況でも進むべき方向や、先々に待つ展開を示してくれます。

ちなみに、この段階ではまだパソコン、デジタルデバイスは使わないこともオススメします。

綺麗に整えるが得意なパソコンで、自由な初稿や下書きは意外と難しい

何らかの資料を作る際に、いきなりワードなどの文書ソフトやパワーポイントといったプレゼン用ソフトを立ち上げる方もいらっしゃいますが、「何を表現するか」が定まっていない状態でパソコンや各種ソフトを立ち上げても、そこから思考や文章を広げることは難しいでしょう。

広げる方向の「考える」と絞り込みや縮める方向といった「考える」の2種類の思考がありますが、紙やその他のアナログツールに比べると、パソコンやデジタルデバイスは広げる方向はやや不向き、絞り込みや縮める段階、整える段階に入ってから導入する方が良いというのが、個人的な考えです。

なんせ、ワードやパワーポイントといったソフトでは出来る操作が決まっていて、ソフトごとに得意なこと、苦手なことも変化する上に、何もない真っ白な画面を前に、「何をどうしたらいいか分からない」とか、「白い画面をそのままにしておきたい」と手をつけられないこともよくあります。

とりあえず立ち上げてしまう癖があるのはよく分かりますが、まずは紙とペンを用意して、指先やペン先で考えを広げる、あるいは考えを整理するようにしましょう。そのままで情報は取り込めませんが、スキャナーやペンタブレットを使って線画を取り込んだり、乱雑に書き殴ったメモを見て、改めて文書ファイルに文章を打ち込んだりしていると、その段階で一回分の客観視や簡単な推敲も実施できます。

いきなりパソコンやデジタルデバイスに向き合ってしまうと、自分が書いたものを前にさらに考える機会が少なくなります。アウトライン作りやプロットづくりを入念に行えば紙とペンがなくても同様の効果を期待できますが、それすらもないままいきなり着手してしまうと、考えを広げなければならないタイミングでモニターと向き合い、広げつつ絞るという相反する思考を同時に行う状況に陥りやすいでしょう。

また、キーボードやペンタブレットではなく、紙とペン、あるいはキャンバスと筆といった道具を使っていると、指先やペン先、筆先で考える状態も味わえます。紙とペンの硬さや書き心地を指先で感じ取りながら手指や腕を使うことで、脳にも運動からくる刺激が送られ、思考が徐々に活性化し、それに合わせて文章や筆も前進する勢いが増していきます。

自分がそれまでに書いた文章や筆跡も、レールや後押ししてくれる小さな加速装置、ガイドラインの役割を担ってくれます。しかし、脳が面白いと感じ始めるかどうか、身体でゾーンに入れるか、フロー体験を得やすい状態に到達できるかは、考える環境、書く環境がいかにスムーズで整えられているかにかかっています。

脳の回転数を上げ、エンジンを吹かせるためにも、まずは紙とペンを使って文章や思考を広げ、前に進めることが重要だと考えています。

集中を阻害するなら、ネットワークからも離れること

書き始めの段階、最初の一文や糸口が思いつかない段階や、書いては消すを抜け出せない状況下で、気分を上げるために音楽やラジオを聴いているのであれば、それももしかしたら足を引っ張る要因かもしれません。

筆者個人の特性かもしれませんが、書き始めの段階で歌詞や目立つ音が入っている歌詞のない曲、あるいはラジオやラジオ代わりに聞くだけの動画などを浴びている状態では、中々前に進めません。気分を上げようとか、やる気を出そうと音楽を探して再生すればするほど、かえって筆が進まない、始められないというサイクルに陥りがちです。

メールやSNSなど、ネットワークやデジタルデバイスを通じた外部とのやりとりも、それを気にしすぎると気が散って、執筆や思考に集中できません。そういう時は思い切って、いわゆるデジタルデトックスを実施したり、インターネットなどのネットワークから離れること、距離を取ることもオススメします。

なんでも出来る環境だとリラックスできますが、リラックスしすぎるがゆえに書く気にならないのもよくあること。あえてホテルや旅館に投宿し、缶詰になって書き上げることがあった往年の文豪や文筆家の先生方も珍しくないので、集中する場合はちょっと不便な環境へ身を置く、いつもと違う環境へ自分を追いやる、追い込むことも一つの方法です。

筆がある程度勢いに乗るまで、あとは頑張って考えなくてもどんどん文章が出てくると思えるところまで到達できれば、あとは紐が切れたタコのようにいくらでも遠くへ飛んでいってくれるので、どこで止めるかを考えれば良いだけ、になります。

第一宇宙速度が出るまで、とにかく前へ。目標は第三宇宙速度

一度宇宙へ飛び出してしまえば、そこから先は比較的楽に進められるでしょう。
宇宙空間へ出てしまえば、大きな抵抗を避けながら、重力や引力を生かしたスイングバイで加速を得て、どんどん早く、どんどん遠くへ向かって進むことが可能です。月や地球どころか、木星の外側、さらには太陽系の外側など、遥か彼方に進んでいるはずのボイジャー1号やボイジャー2号に、追いつくことも可能かもしれません。

文章や思考も、第一宇宙速度に到達してしまえさえすれば、そこから先は比較的楽に書き進められますし、さらに思考や筆が加速して、どんどん先へ文章を展開させることも可能です。
裏を返せば、地表にいる間、重力や空気抵抗の影響が大きい場所へいる間、勢いに乗る前、動き出す前の止まっている状態が一番エネルギーが低く、様々な影響を振り切るのが難しい状態とも言えます。

だから、まずは書き上げた文章が正しいかどうかより、勢いよく書き進められる状態になっているかどうか。勢いを出すため、文章を書く速度、思考を広げる速度を早めるために、消せないペンを握り締めてどんどん書き出す。間違ってても先の展開を考え、やっぱり描き直したいと思ったら思い切って手直しする。何度も何度も繰り返せば、そのうちエネルギーも速度も十分高まって、いつの間にか第一宇宙速度へ到達できていることでしょう。

筆が乗ってきたら、第一宇宙速度には意外と早く到達できます。
そこまで行けば歌詞のある音楽や目立つ音が入った曲を聴いても集中が途切れることはないでしょうし、気分転換で多少メールやSNSをチェックする時間を設けても問題ないでしょう。

可能であれば目標は、第一宇宙速度や第二宇宙速度ではなく、太陽系を振り切って外へ脱出できる第三宇宙速度。誰もまだ見たことがないアナタの中にある想像や思考の外宇宙を、ぜひ私たちにも届けてください。

最初から、手早く時短で綺麗に仕上げようと思わない

編集や加工で綺麗に仕上げるためには非常に便利なパソコンや、デジタルデバイスですが、最初から楽をするつもりで手をつけない方が賢明でしょう。
編集や加工には向いていても、製造や収穫には不向きです。そこはアナログツールをメインに、額に汗をかいて体力を使う他ありません。

文章に限らず、写真や映像作品であっても、最終的な仕上がり、納品物のボリュームと素材となった文章や撮影された写真、映像の量とは同量にはならないでしょう。やはり何分の1、何十分の1になることがほとんどで、良い部分、美味しい部分を調理して残すためには、捨てられる部分も想定した量を素材として用意しなければなりません。

文章だけはなぜか、「考えれば出てくる」とか、「コストはほぼゼロで製造できる」と思われがちなので、文章も他の創作物と同様に素材の準備、製造や調達が必要ですよ、と改めて述べておきます。

書きたくて書いている人の場合、辿り着きたい世界や自分が思い描く宇宙があって、早くその世界へ踏み入りたい、あるいはその世界を読者に味わっていただきたいから書いているのでは? だったら、書いては消すを繰り返すのではなく、早々に第一宇宙速度へ到達するやり方、重力や地球圏を振り切る速度を出す方法を身につけましょう。

兎にも角にも細書きペンと消しゴムは投げ捨てて、一回で太くハッキリ書ける消せないペンを握りしめ、パソコンやデジタルデバイスへ向き合う前に、まずは紙の上で書きまくりましょう。書いたら書いた分だけ、宇宙へ飛び出すだけの速度、エネルギーを蓄積できますよ。

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長谷川 雄治
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長谷川 雄治
昭和63年生まれ。大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科卒。
2011年からWeb制作に従事。コーディングやWordPressのカスタマイズ等を主に経験を積む。2013年、仮面ライターとして独立開業。マーケティングや企画、上流も下流も幅広く対応。
コーディングとコンテンツ制作の同時提供を考えるヘンな人。
BLUE B NOSEでは開発等を担当。

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