目指せ。超ニッチなロマン技

長谷川 雄治
67回表示・読了見込 10

ロマン技の解説から始まって、コンテンツマーケティングや記事構成の話まで。
粒度の問題や、なぜ「超ニッチ」でなければならないのかまで、BLUE B NOSE(以下:BBN)流の考え方を、解説してみました。

ロマン技とは、「非常に使いにくい代わりに当たれば凄まじい火力をたたき出すような大技やコンボ技」(Pixiv百科事典 https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%AD%E3%83%9E%E3%83%B3%E6%8A%80 より引用)、もしくは「厳しい発動条件や高いリスク&コストに見合わないリターン、そしてそれを上回る見栄えやインパクトを兼ね備えた技」(ニコニコMUGENwiki https://w.atwiki.jp/niconicomugen/pages/1030.html より引用)のこと。

令和7年でも伝わるかどうか若干不安ですが、『ドラゴンボールZ』の魔人ブウ編で登場した特別な元気玉、「超元気玉」が一番分かりやすいでしょう。
(超元気玉の解説は、Pixiv百科事典へhttps://dic.pixiv.net/a/%E8%B6%85%E5%85%83%E6%B0%97%E7%8E%89

『新世紀エヴァンゲリオン』に登場した「ポジトロンスナイパーライフル」(https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%83%AB)も、ロマン技やロマン砲に含めても良いでしょう。

一撃必殺級の威力を誇るけど、当たる確率は異常に低く、高コストかつハイリスク。
放つ前後の隙や反動も大きく、当てないと攻撃した側が窮地に陥るのも、「ロマン技」の特徴でしょう。
それ故に、独特の雰囲気や魅力、ロマンも漂わせています。

唐突に「ロマン技」の話から始まって、「急に、何の話?」と思われるかもしれませんが、「ロマン技」の効果や特徴と、コンテンツマーケティングで用いるべき「コンテンツ」の間には、隠れた類似点がいくつか存在します。

今回は、なぜ「ロマン技」なのか。
また、「コンテンツマーケティング」に「ロマン技」をどう活かせば良いのかについて、筆者の考えを解説しましょう。

目次

簡単に出せないし、当たらない

ドラゴンボールを引き合いに出したので、超元気玉との比較として、「かめはめ波」を思い浮かべてみましょう。こちらもエネルギーを溜めるという隙が生じたり、狙って当てるという手間もありますが、元気玉よりは気軽に使用しているイメージです。仮に外したとしても、すぐに二発目を放ったり、ちょっと向きを変えて当てに行く運用も可能で、継戦能力はこちらの方が高いでしょう。

ドラゴンボールを題材にしたゲームだと、いわゆる「エネルギー弾」や、格闘ゲームでもお馴染みの「弱パンチ」や「中キック」は、ボタンひとつで繰り出せます。「波動拳コマンド」や「昇竜拳コマンド」の暗記や入力も必要もありません。

また、複雑な操作が不要なので、気軽に繰り出して、相手にヒットさせることも比較的容易です。

威力が低ければ低いほど、同じパンチやキックでも「弱」の方が素早く出るはず。

様々な利点を投げ捨てることにより、そのトレードオフの結果、「ロマン技」は凄まじい威力を獲得しているとも言えます。その潔さや独自の美学に、ロマンや魅力を感じますよね。

なお、簡単に出る基本動作や技は、大抵どのキャラクターでも使用可能です。
モーションやエフェクト、キャラクター性能による違いもありますが、特別注目に値するような独自性は見られません。

その場の思いつきでパッとまとめたコンテンツや、同業他社の記事を参考にしつつ、AIの力を借りて書き上げたブログ記事は、「パッと出せる技」に該当します。
コピーコンテンツと判定されることを避け、程々のオリジナリティは持たせていると思いますが、それぐらいの差であれば、老舗か大手企業など、知ってるブランドを選ぶでしょう。

「これならウケがいいはず」と発信する側が分かりきっているコンテンツや、誰にでも理解されるようなコンテンツも、「外れない技」や「使い勝手のいい技」であって、「ロマン技」とは言えません。
無難なコンテンツや万人受けするコンテンツも、わざわざ「アナタ」から受け取る必要はない上に、誰が発信してたかという印象や評価も、蓄積されにくいでしょう。

GoogleアルゴリズムやAI、サイトを訪問してくれるユーザーに対して、独自の着眼点を持つ、専門性の高い書き手や、オリジナル性の高いコンテンツであると判断してもらいたいなら、もっと狙いを絞った「当たらない」コンテンツや、簡単にアウトプットできない「誰も見たことがない」コンテンツを絞り出さねばなりません。

非常に狭い場所を目掛けて、高密度かつ高濃度なコンテンツを出す。
ロングテールやE-E-A-Tにも則ったコンテンツというのは、ロマン技にも似たニッチさや不便さを備えている、と私は考えています。どこにも届かないかもしれない、誰にも響かないかもしれないという覚悟を持った上で、5,000字前後の読み応えたっぷりのコンテンツとして、熱意やこだわりを持って作る。
その無謀さと底知れない狂気、真摯さの塊──それが、超ニッチな「ロマン技」です。

トルコライスやお子様ランチは、粒度が荒い

文章の書き方を指南する記事として、先月末頃に『作文Tips 遅筆のすゝめ』(https://note.com/bbns/n/n88b2f7145718)を公開しました。

書きたいこと、伝えたいことを「起承転結」型へ落とし込む際、「承」の部分では、サブトピックやサブエピソードを3〜4つ用意しましょうと言いましたが、この段階で取捨選択を迷うという相談がよくあります。コンテンツを通じて伝えたいメインと、そこに盛り込みたいサブの主従関係が見極め切れていない場合や、事前の線引きが上手くできていないと遭遇しがちな問題です。

その結果、豚カツもピラフもスパゲティもワンプレートに盛られたトルコライスになったり、ハンバーグもエビフライもオムライスも諦められないお子様ランチになってしまうことも、よくあります。
なぜそうなるのか。色んな要素が考えられますが、「粒度の荒さ」が一因として挙げられます。

そのコンテンツで伝えたいこと、もしくはそのコンテンツを通じて成し遂げたい目標や目的、読んだ人に取って欲しい行動が複数の場合、アレもコレも捨てられないとなってしまい、結果的に「全部盛り」になりがちです。
そうなると、部分部分では良質なコンテンツであっても、全体を通して「何の話だっけ?」という印象が残った挙句、「よく分からなかった」だけが記憶されるでしょう。

そのトルコライスやお子様ランチを認知してもらって、それ一本でのしあがるつもりなら、ナシゴレン的な日替わりのごちゃ混ぜでも良いかもしれませんが、いつ行っても「何を食べたか覚えていない」のは飲食店としては成功でも、コンテンツマーケティングやリードナーチャリングとしては、失敗です。

気象庁公式のアメダスのような20km四方でも、まだまだメッシュが荒いんです。
精度の高いコンテンツマーケティングをやりたいなら、「予報精度No.1」を掲げるウェザーニュースのように、1kmメッシュを目指して細分化する必要があります。

その1kmメッシュの範囲なら、絶対に読み手を満足させられる。
必ず何かしらの役割を果たす。

一発必中で、究極の局地戦を数多く用意する。
それがコンテンツマーケティングとして、あるべき姿です。

8×8、9×9、もしくは19×19

チェス盤なら8×8で64マス、将棋盤なら9×9で81マス、囲碁の19路盤なら石を打つ交点は、361にも登ります。この一つ一つの場所で、読み手、ペルソナやリードが求める情報を提示するようなイメージです。
非常に細かい疑問や質問に対して、懇切丁寧に回答し、理解や納得を着実に積み重ねていく。

対面での営業やリアルタイムのコミュニケーションとは異なり、事前に準備したコンテンツを通じた、時間差のコミュニケーションです。粒度や解像度の粗いボヤけた情報では、十分な効果を発揮しません。

相手がそれなりの身銭や時間、体力を使っているのなら、「払った分は回収したい」という気持ちが作用して、真剣に向き合ってくれますが、無料かつどこでも触れられるコンテンツの場合、「コレなら、図書館で十分だったな」と思われるレベルでは、なかったも同然の扱いになるでしょう。
中身が多少優れている程度であれば、著名人の書籍やセミナーの方が、多少高額であっても有利です。

つまり、64分の1、もしくは361分の1に細分化したコンテンツを、必要な数だけ用意する。
それも「普通」の満足ではなく、「超満足」をお届けできるような、超ニッチに絞り込んだコンテンツが必要です。

ペルソナの要望に、それぞれのコンテンツで一つずつ応えていく。
それをゆっくりでも良いから一つずつ増やしていくことが、結果的に盤面を制する手堅いルートになります。

ロマン技を、絶対当てる

非常に小さなメッシュに細分化し、超ニッチな粒度に凝縮したロマン技は、基本的に命中しません。
外れる確率が高い上に、簡単に繰り出せないからこそのロマン技なのであって、後先を考え、威力を抑えて「当てに行く」運用は相応しくないでしょう。

その絶大な威力は、掠っただけでも致命傷になり得るレベルですが、やはり最適な距離で100%の効果を目指したいですよね。ロマン技を一発必中にして、細分化された局地戦を着実に制するには、外さない工夫や、防御不能へ導く段取りも欠かせません。

その一連の手段や手続きについて、『作文Tips 遅筆のすゝめ』(https://note.com/bbns/n/n88b2f7145718)でもご紹介したつもりです。「伝えたいこと」を「転」の位置におき、「しかし」の後に置く。それを十分活かす、効かせるために読み手の興味関心を誘い、前のめりにさせた上で崩す必要があります、と。

読み手、受け手にはコンテンツの内容を「信じない」や「受け入れない」という抵抗も可能ですが、それを最小限にし、ロマン技を一発必中にするには、

  1. 警戒させず、間合いに入ってもらう
  2. 基本技を駆使し、ロマン技に適正な距離を保ち、向こうから速度をつけて近づいてもらう
  3. 相手の意表を突き、回避や防御体勢を取らせない
  4. ロマン技を叩き込む

この段取り、このステップが必要です。

ロマン技の威力が高ければ高いほど、また強敵を撃破してきた著名な技であればあるほど、「XX返し」や「XX破り」といった対抗策、いわゆる「メタられる」可能性も高くなります。
だからこそ、コンテンツを通じたコミュニケーションの場面でも、こうした駆け引きや工夫が存在することを知っておきましょう。

例えば、『ドラゴンボールZ』セル編の決め手となった「親子かめはめ波」。
セルが先に「かめはめ波」を放ち、悟空、悟飯が迎え撃つーー回避も防御も困難な撃ち合いの中、悟飯は押し勝って、セルを再生不能なレベルで打倒します。

また、ポジトロンスナイパーライフルが活躍する「ヤシマ作戦」も同様に、報復攻撃を受けながらの第二射が、決定打となりました。

つまり、相手が攻撃しようとしている瞬間、相手が勢いよく接近している瞬間こそ、最大のチャンス。
その瞬間を作るための挑発やブラフ、フェイントによる崩しーーそれらを制する者が、全体の勝利を掴む構造になっています。

ロマン技の成否には、それを中心として活かす連携や精度の高い練習、駆け引きのテクニックやセンスも不可欠。一朝一夕には決められないことも、分かっておきたい。

粒度の粗いコンテンツから、超ニッチへ

類似コンテンツが多い記事や、検索需要の多いコンテンツをアウトプットしたところで、GoogleのアルゴリズムにもAIにも、恐らく一般ユーザーにも、何らかの専門家と見られることはないでしょう。どの書籍にも掲載されていそうな、初歩中の初歩を基礎知識として解説したところで、ブランディングにもマーケティングにも、大した効果は期待できません。

同業者なら誰にでも書けそうな記事をまとめたところで、最終的には先行者か著名人が評価され、有名なブランドや大手企業の発信や、商業出版されている書籍の方を信用するでしょう。

粒度の粗いコンテンツでは、どんなに発信を積み重ねても「その他大勢」に埋もれてしまいます。
検索エンジンにもAIにもユーザーにも、アナタの発信だと評価することはありません。

また、誰にでも響くコンテンツや、すぐ理解できるコンテンツでは、オリジナリティが不足している上に、簡単に伝わると油断してしまい、コンテンツそのものの質まで低下するでしょう。

そういった埋没や質の低下を避けるために有効な手段が、超ニッチ化です。
アレもコレも伝えようとせず、一つのテーマを深掘りし、一般的な解釈に留まらず、独自の視点や経験まで注ぎ込む。小さなマス目に凝縮することで初めて、アナタのコンテンツは「ロマン技」やキラーコンテンツとして輝きます。万人受けを諦める覚悟が、専門性と存在感を高めてくれます。

デミタスカップの小ささに圧縮するリストレットや、直径20km程度にギュッと圧縮する中性子星のように、強烈な負荷を減ることで、凡庸なコンテンツから、濃厚なカフェインで一気に目が覚めるような、人を選ぶけどパンチのある力強いコンテンツへ生まれ変わるはず。

伝わらない人がいてもいいという覚悟の上で、思い切って伝わりにくい話題を深掘りする。
その思い切りや、一里塚に全てを注ぐ姿へロマンを感じ、熱烈に支持してくれるファンが現れるかもしれません。

思い切って狭いところで、小さくなってみる。
それが逆に、世界や可能性を広げるヒントかもしれませんね。

共にロマンを求めましょう

上手く決まれば、読み手の心を掴み、GoogleやAIからも評価されるーー超ニッチな「ロマン技」コンテンツ。

簡単には成果に結び付かず、外れる確率の方が高いフルスイング。
それでもあえてそれを選ぶ背中や、そこから醸し出されるロマンを誰かに感じて欲しいなら、BBNが全力でサポートします。

難易度の高い茨の道を歩もうとするそのロマンも、職人技でお供します。
コンテンツの活かし方や情報発信で迷ったら、遠慮なくいつでもお声かけください。

一風変わった発想はこちらでも

情報発信に「コト消費」の概念を持ち込み、ちょっと変わった方法を提案している記事はこちらにも。もしよろしければ、ご一読ください。

情報の巻き上げで、奥行きのある情報発信を

日本語の特徴や、巨匠らの取り組み、あるいは日々の生活からインスピレーションを得たお話もギュッとまとめて、文字情報で奥行きのある情報発信をする方法、情報を巻き上げる方法へ落とし込んでみました。筆者の偏見も相当混じったお話ですが、少しでもご参考になれば幸いです。
長谷川 雄治
ノウハウ

シェア・共有

長谷川 雄治
昭和63年生まれ。大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科卒。
2011年からWeb制作に従事。コーディングやWordPressのカスタマイズ等を主に経験を積む。2013年、仮面ライターとして独立開業。マーケティングや企画、上流も下流も幅広く対応。
コーディングとコンテンツ制作の同時提供を考えるヘンな人。
BLUE B NOSEでは開発等を担当。

関連記事

最新記事

人気記事

コストを抑えたWebサイト制作に最適 速くてリッチなWebサイトが、月額10,000円〜

メールでお問い合わせ ご利用の流れを確認する