難しい商材こそ、手間と言葉を尽くせ

長谷川 雄治
93回表示・読了見込 11

最近目にした旧作ドラマの配信をきっかけに、BLUE B NOSE(以下:BBN)が本来やりたかったこと、向き合いたい相手について、長々と語ってみました。
難しい商材、どんと来いと言う理由もお伝えしています。

先月の中旬から、2016年に放送されていたTBSのドラマ『重版出来!』(松田奈緒子作、小学館の同名タイトルが原作)がTVerで配信されていますね。つい先日、個人的に放送当時から衝撃を受けたエピソードの第7話も配信され、ムロツヨシ演じる沼田に、今回も胸を打たれてしまいました。

重版出来!』(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E7%89%88%E5%87%BA%E6%9D%A5! )の詳細はWikipediaでもご覧いただくとして、沼田について少し情報を補足すると、ベテラン漫画家の元でチーフアシスタントを20年弱勤め、二十歳で新人賞を獲得するものの、連載を勝ち取ってデビューするには至れず、燻り続けている人物。絵は下手だけれども圧倒的な才能を持つ新人がアシスタントとして入ってきたことにより、漫画家になることを諦めて家業を継ぐために実家へ帰るという、それだけのお話ですが、毎回グッと来てしまうお話です。

自分でもちょっと特別じゃないかと思っていたところに、新人賞なんてサラッと授賞して評価されてしまうと、「やっぱり特別なんじゃないか」と変なプライドというか、自己肯定を確立させてしまって、それがあるから、かえって自分を追い詰めることになる、希望に縋って現実と向き合えなくなると、鋭利な刃物を突きつけられた気になるクリエイティブ系の方々も沢山いらっしゃるのでは。

細やかな才能とその功罪については、また別の機会に深掘りするとして、今回注目したいのは「沼田」のような事業者や商材って、実はかなりありふれているのではないか、ということ。沼田はチーフアシスタントを20年近く勤め上げ、新人賞を授賞する以前から、十分な画力はあったでしょう。でも、それだけでプロとして独り立ちするほどの武器にはならず、連載を勝ち取るためのネームが「分かりにくい」としてボツとなっています。

何の強みもスキルもない人物ではないけれど、それが競争優位性として機能するほどではない水準。つまり、大学でよく見られる評価体系の「優、良、可」(優の上に「秀」、可の下に「不可」の5段階もよく見ますね)でいう「良」のランク。100点満点だと70点前後ぐらい、偏差値だと51〜60や65ぐらいの「上位」ではあるけれども、もっと秀でた人たちや、その上の超一流も控えているような位置付けでしょうか。

主観的な自己評価だけでなく、周囲から客観的な評価も受けて、「他より優れている」と認められたところで、それだけで勝負しても上には上がいる、あるいはもっと好条件の人たちがいる。右を向いても左を向いても成熟市場が広がっている日本国内で、新たに何か始めようと思っても「細やかな強み」だけでは、どうすることも出来ません。

沼田の話が多くの方に突き刺さるのは、誰しもが60点とか70点ぐらい何かしらの強み、偏差値60ぐらいの細やかな強みを一つぐらいは持っているからで、また大人や社会人として、それだけではどうにもならないという現実にぶつかったことがあり、苦汁を嘗めたり、打ちひしがれた経験があるからでしょう。

素朴な強みだけで、圧倒的な強みを持つ相手(=「優」)や、業界最大手(=「秀」)と同じことをしても上手くは行かない。そんなことは分かっているんだけど、つい自分を「特別な存在」だと過大評価すると失敗してしまいます。どんな顛末を迎えるかは、沼田の話に現れています。

売れ線とは程遠く、また差別化になるほどの分かりやすい強みもない。リソースも潤沢にあるとは言えない難しい商材は、どうすべきなのか。沼田のように漫画家を諦めて実家へ帰らないようにするにはどうすべきなのか。今回は、その辺りについてお話しましょう。

目次

本当に優れているなら、勝手に売れる

本格的な中身へ入る前に、非常に残酷な宣言をしておきましょう。
本当にアナタやアナタの商材が「優」や「秀」に該当するレベルで優れているなら、その圧倒的な競争優位性により、それほど苦労することなく売れていくでしょう。

他社では取り扱っていない唯一無二の替えが効かない商品とか、立地や価格設定が完璧で、一瞬も客足が途絶えることのない商店、あるいは生活インフラに近いガスや電気、銀行などの金融や電話などの通信みたいな商材とかが、「優」や「秀」です。

本当は、どんなに優れているものであっても、多少は売れるように工夫しないと伸びませんし、伸び悩む時期もあるんですが、強みが「良」のものよりは、圧倒的な「売れ線」であることは間違いありません。

つまり、簡単に売れる気配がない商材、売ることに苦労している商材は、その時点で「良」ではあっても「優」や「秀」には届いていない、とも言えます。

自己評価だけでなく、第三者の客観的な評価もあるから、自分のことや商材を「特別なもの」と思いたい気持ちはよく分かりますし、「特別だ」と思わないとそれで勝負をし続けるのも困難でしょうから、その思いを否定するつもりもありませんが、自分を客観的に値踏みして、正確な現在地や「身の丈」を把握しておかないと、「特別だ」という過度な自負は足枷になりかねません。

アナタやアナタの商材は優れています。しかしながら、競合や他分野との比較も視野に入れると、厳しい評価にならざるを得ないというのが、現実です。分かりやすく、圧倒的な競争優位性がなければ、「良」であると自覚しておく。自己評価としては悲しい気もしますが、高く見積り過ぎるよりは、低くしておく方が無難でしょう。

売れそうな商材をもっと売る

より正確に表現すると、「簡単に売れそうな商材」を今まで以上の勢いで売り捌くために、宣伝広告やマーケティングを展開すると、商材を取り巻く関係者は潤って豊かになって行きます。
つまり、「すでに売れている」か「売れる要素がある」ものに対して、資金やヒトを投じて売上を作っていく、もっと売れる状況を整える方が簡単です。

また、儲かっている広告代理店やWeb制作会社も、基本的には上記の考え方で動いているように思います。慈善事業ではないので当然ですが、「売れそうにない商材」の場合は、最低限の制作費が回収できればそれでいいと割り切って、過去の(売れ線商材の)成功事例を水平展開して、単発の作り切りの上、最後まで面倒を見ないで離れていくというケースも多いでしょう。

よって、「(簡単に)売れそうにない商材」は、「簡単に売れそうな商材」に見せかけたり、「売れている商材」の型にはめて、面倒な「売れない理由」を削ぎ落とし、没個性化させて「よくある商材」として「手早く売る」パターンも沢山見て来ました。

本当に売りたい商品やバックエンドの利益率の高い商材はあるのに、広告代理店都合による薄利多売のフロントエンド商材を作らされ、それにばかり手間を取られ、途中で止めるに止められなくなり、必死に働いても固定客は付かず、自転車操業となって疲弊していく事例も、少なくありません。

広告代理店やWeb制作会社を悪者扱いして、「ひどいやつだ」と切って捨てることもできますが、そんなに単純な話ではなく、彼らにとって都合が良く、また彼らが成功事例を積み重ねて来た得意技や、彼らが熟知している勝ちパターンであり、舞い込んできた案件に対してしっかり要件定義をし、作業範囲や費用を決めて見積もり、段階を追って進めていくウォーターフォール型のスタイルでは、そうせざるを得ないという事情もあります。

また、彼らに依頼をする側も、自分たちも多少の投資をすれば、成功事例として挙げられている人たちみたいになれるかもしれないと思い、自分と成功事例との差を正確に見積もることなく動き出したため、高い授業料を払う結果となるのでしょう。

どちらにも悪気はなく、また事業者側に騙す意図もなく、売るのが難しい商材や条件が厳しい案件と、従来の作り方の噛み合わせが悪いことや、依頼をする側の自己査定の甘さが原因です。
「簡単に売れそうにない商材」で、資金やヒトなどのリソースが潤沢にないという条件も付く場合、既存の成功事例をただマネしたところで、上手く行きません。自分の商材が、「優」や「秀」に該当しないかもしれない、「良」のレベルでしかないかもしれない話と合わせて、事前に認識しておきたい部分です。

千差万別な成功事例は、再現困難

ケンタッキーフライドチキンのオリジナル・レシピを考案したカーネル・サンダースが、売り込みに何回も断られ続け、それでも不屈の精神で世界規模のフランチャイズを作り上げた逸話や、マクドナルド兄弟とミルクセーキのミキサーを売りたかったレイ・クロックが出会い、世界最大のファーストフードチェーン店を作り上げるエピソードや、家業を立て直したのち、50歳をすぎてから日本全国の測量を始めた伊能忠敬など、成功した企業や偉人の逸話というのは興味深いものです。

しかし、それをそのまま再現しようと思っても上手くいかないケースがほとんどでしょう。

「勝負は時の運」という言葉があるように、その時代や環境、その人自身の条件に合った機運があり、それを掴んだから成功したでしょうし、それぞれの時代背景や個人の条件が全く異なる以上、表面的に真似したところで、「再現」にすらなっていない可能性も高いでしょう。

もちろん、パターンや法則のような「そうなりやすい」ノウハウやテクニックは存在します。しかしながら、それで必ず上手くいくのであれば、「上手くいくはずなのに、なんで?」と頭を傾げることもありません。成功する方法を徹底的に調べ上げ、「失敗しない方法」を詰め込んだはずなのに、なぜか「飛ぶように売れる」どころか、「一つ売る」のにも苦労する。

その答えは非常に単純で、成功事例というのは稀有な存在であり、その人、その企業だけに固有のものだからです。成功事例に至らなかった失敗事例、競争に敗れた圧倒的多数の死屍が歴史の影に埋もれています。

「そんなことは、言われなくても分かっている」のに、Web制作会社の成功事例やお客様の声、マーケティングの書籍に魅かれて、「ウチもこうなりたい」と依頼するんですね。引き留める立場でもありませんし、最終的には自己責任です。

大した苦労をしなくても売れていく「売れ線」の「優」や「秀」、分かりやすく売れる要素がある商材や、潤沢なリソースがある場合は、それでも何とかなりそうですが、「良」の商材やリソースが豊富でない環境では、ありふれた成功例に飛びついても、余計な投資が嵩んで消耗するだけでしょう。

経済的な死期を早めず、生き残ることを本気で考えるなら、『簡単に売れない「良」の商材』は、簡単に成功する方法を選ばないこと。誰かの成功パターンをそのまま真似しないこと。自分たちに合った生き方や売り方を、時間をかけてゼロから作っていく方が賢明です。

一言で言えないなら、一言で言わない

「良」の商材が「良」のままで「簡単に売れない」のは、受け手を選び、相手にリテラシーを要求してしまう「良さ」を持つからでしょう。「分かりやすい強み」がない、もしくは一般的に強みと認識されるほどの優秀な強みではない、という場合も考えられます。

商材を説明する際に「簡単に言うと?」とか「一言で言うと?」と聞かれ、「えーっと」と言葉に詰まったり、何から説明すればいいか整理に時間がかかったりするのも、あるあるでしょうか。

「分かりにくいので、こうしましょう」と提案され、プロの言うことだからと従った結果、本来の持ち味を見過ごされたまま没個性化し、プロモーションやブランディングがミスマッチなまま、レッドオーシャンの戦いに放り込まれるケースも少なくありません。

マスに向けた宣伝広告で「勝負は一瞬」と考え、「難しく考えなくても判断できる」ことを重視して来た従来の価値観ならともかく、現在ではそれだけが正解とは限りません。万人に理解され、売り上げを伸ばすために数を追い求める必要はなく、特定の層へ繰り返し接触し、時間をかけて理解してもらう手法も浸透しつつあります。

「難しいことを簡単に説明する」が持て囃された時代もありましたし、今も動画投稿サイトには「解説」を謳う動画も溢れていますが、同時に「難しいことを難しいまま」説明するしかないことや、「難しいことを難しいまま」伝えるスタイルを歓迎する人たちも増えています。

分かってくれる人、あるいは分かろうとしてくれている人へ接触する機会や経路がSNSにより増えている今、無理に「簡単に一言で」伝える必要はなくなっています。

瞬間的に理解できるものを好んだり、難しいものを避ける傾向が基準となっているように思いますが、「一言では言いにくい」のなら、無理に合わせなくてもいい時代だということは間違いありません。

短い時間で端的に説明できそうにないなら、無理に一言で説明しようとしない。順を追って説明すればいいし、オウンドメディアやブログを使って何度も繰り返し説明しても構いません。

自分たちの成功方法を模索するのと同様に、自分たちへの理解や認知を高めるという点でも、時間や手間を惜しまない。「簡単に売れない」なら、それを理解した上で肚を括って前人未到の難しい方を選びましょう。「良」の商材にとって有効なのは、そっちのルートです。

手間と時間をかけて、見せ方と言葉を磨こう

BBNでは「簡単に行かない」というよりは、試行錯誤を繰り返すために時間を費やさざるを得ないという理由から、月額制のWebサイト制作をご提供しています。

過去の成功事例や要件定義の場で作られた机上の空論ではなく、実際に公開したWebサイトとアクセス情報を元に、PDCAやOODAループを回しながら、ペルソナマーケティングとコンテンツマーケティングに注力する構えを取っています。

どんな人方々に向けて、どんな訴求をすればヒットするのか。また、どうすればそれを継続的に伸ばしていけるのか。本当に伝えたいことは何なのか。仮でアウトプットしてみたけど微細な違和感を感じているから、より良い表現を考えたい。

「良」の商材をお持ちの方々にこそ武器になりそうなWebサイト、見せ方や打ち出し方に加え、何を伝えるか、どう伝えるかをしっかり形にしながら深掘りしていかないと、前進が難しいと感じています。

事前に見積もりを出す方法だと齟齬が生まれがちですが、月額制なので、どんなに時間がかかっても構いません。誰にも伝えられなかったアナタの想いやこだわりを、思いっきり私たちにぶつけてください。アナタにぴったりな表現や勝利の方程式が見つかるまで、何週間でも、何ヶ月でも、何年でも、お付き合いします。

かく言う我々も、皆様と同様に圧倒的な競争優位性を持たない「良」、あるいはそれ以下の存在です。「上手くいかない」という想いを日々抱きながら、皆様と共に共存共栄できる方法を模索しています。

無理なく続けられる価格で、自分たちにあったやり方や伝え方を、手間と時間をかけてゼロから作っていきましょう。

沼田 渡のような人にこそ、BBN

随分と長くなりましたが、結論としては『重版出来!』の沼田 渡や、沼田の存在を象徴として説明してきた「良」の商材をお持ちの方々、難しい商材を抱え、決して恵まれた条件とは言い難い方々にこそ、BBNを使っていただきたいと考えています。

リテラシーの高い人へ向けた情報発信や、伝え方や見せ方を少し工夫するだけで伸びる可能性があるなら、それをお手伝いしたいという想いです。

簡単には伝えられない「いぶし銀」もきちんと評価されてほしいし、「細やかな良さ」も大切にされる世の中になってほしいとも思っています。

何を伝えればいいか、何をすればいいのか分からなくても大丈夫。
こちらから積極的に汲み取って、アナタを勝手に輝かせます。

我々に少しでも興味を持たれた方は、いつでも気軽にお問い合わせください。

案件になりにくくても大丈夫

従来なら扱ってもらいにくい商材でも、BBNなら対応可能です。案件未満でも大丈夫な理由については、こちらの記事もご覧ください。

手ぶら、生煮え大歓迎。お身体一つ、あればイイ

BLUE B NOSEは本来敷居が低いサービスなのに、真逆のコンテンツばかり発信してしまいました。今回は上げてしまった気がするハードルを下げるべく、以下に気軽に利用できるサービスなのかをざっとご紹介しています。
Webサイト制作の依頼としてまとまっていない案件でも、準備が不十分な体制でも丸ごとお任せいただけるBBNのサービスについて、今までとは違う角度からご説明します。
長谷川 雄治
サービスについて

シェア・共有

長谷川 雄治
昭和63年生まれ。大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科卒。
2011年からWeb制作に従事。コーディングやWordPressのカスタマイズ等を主に経験を積む。2013年、仮面ライターとして独立開業。マーケティングや企画、上流も下流も幅広く対応。
コーディングとコンテンツ制作の同時提供を考えるヘンな人。
BLUE B NOSEでは開発等を担当。

関連記事

最新記事

人気記事

コストを抑えたWebサイト制作に最適 速くてリッチなWebサイトが、月額10,000円〜

メールでお問い合わせ ご利用の流れを確認する