秘部を開示する覚悟こそ、”魅力”なのかも

長谷川 雄治
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一義的なベネフィット、価値だけでは差別化困難な昨今、マーケティングやブランディングで注力すべきポイントも千変万化していますが、筆者が力を入れるべきだと考えているキーワードは「(厚みのある)魅力」。単一の物差しでの比較を避ける、多角的かつ複合的な魅力、独自性をどう見出していくのか、なぜそれを重視するのか。その辺りについて、筆者なりの考えをお伝えします。

Webサイトを新たに作ったり、リニューアルする際に避けては通れない「誰に」「何を」「どう伝えるか」。今回はその中の「何を」と「どう伝えるか」に関わるお話を。
Webサイトを作りたいと思った人や、マーケティングをやろうと思った人なら大なり小なり持っている「伝えたいこと」。その中身や戦略は、現代やあなたに見合ったものになっていますか?
2020年代も半ばに差し掛かる昨今、Webサイトを含むマーケティング、ブランディングで伝えるべきもの、その方向性について「魅力」というキーワードを用いて筆者なりに解説していきます。

目次

モノの価値もコトの価値も、多種多様の複雑な影響下にある

マーケティングやブランディングの「何をどう伝えるか」という発信で大事なキーワードと言えば、価値やベネフィット。ただし、目に見えたり手で触れられたりする、商品やサービスそのものといった物質的な部分、顧客との接点となるインターフェイス、UIに該当する「モノ」の部分と、それらを利用することで生じる使用感や、使用体験を含めた経験や体感、その時の思い出といった部分まで含めた、UXに該当する「コト」の部分など、若干種類や属性が異なる価値、ベネフィットが存在します。

(もちろん、モノとコトの二つに分ける以外の考え方もあると思います)

これらの価値、ベネフィットに対して、どの部分の何が良いと受け取るかは、受け取る側の趣味嗜好、優先順位に大きく左右され、更に受け取り手が置かれた状況や立場といった時と場所、運不運も含めた前後の文脈、コンテキストも影響してきます。

多少なりとも一般的な傾向はあったとしても、甘いモノを好む人がいれば、(塩)辛いモノを好む人もいるし、「蓼食う虫も好き好き」という言葉や「アバタも笑窪」という言葉もあるように、一般的には忌避される要素を好む人、状況だって存在します。

「ドリルではなく穴を売れ」が適切なこともあれば、工具が好きな人には「いやいや、やっぱりドリルを売りましょう」が適切なこともあるし、ストレスが溜まっている人であれば「何でもいいからぶっ壊したい」とドリルや穴だけでない何かが適するかもしれません。

「ココが長所、良いところだ」と分かりやすくしたり、ベネフィットを簡素化して言語化したり、何らかのモデルへと落とし込んでしまうと、折角の多角的、多面的な独自性が見えにくくなってしまい、自ら既存商品や大手企業と比較されやすく、勝ちにくい状況へ陥る可能性も十分あります。

折角なら先行している既存商品や大手企業、強者が選びにくい戦略、打ち出し方を選んで真っ向勝負しないやり方を検討してみませんか?

万事において優れている商品、サービスはほぼ存在しない

具体的な話へ移る前に、大前提を一つ整理しておきましょう。
どんなに優れた商品、サービスであっても、全てが優れていて、欠点もデメリットもない商品やサービスは基本的に存在しないと言って良いでしょう。

品質と価格は必ずしもトレードオフとは限りませんが、一般的には品質を上げれば価格も上がり、価格を下げれば品質も下がります。もし、低価格と高品質を両立できている場合は、その裏にはそれを実現するための大量生産や、巨額の設備投資、企業努力などが詰め込まれているかもしれません。その場合、総合的に見ると「安い」とは言えないでしょう。

身近な水や空気ですら、良い面ばかりではありません。
水を摂取し過ぎれば水中毒が起こりますし、不純物のない超純水、精製水も身体にいいとは言えません。空気中の酸素も、呼吸の過程で発生する副産物の活性酸素は身体を蝕むリスクがあります。生きるための呼吸ですら有害になり得るなら、「良いことしかない」なんて、ほぼあり得ないと思いません?

つまり、先に市場を席巻している既存商品や、大手企業の人気商品ですら長所も短所も抱えていて、完璧とは言えないのが普遍的です。あなたが新たに世に送り出す商品やサービスも、優れている面とそうでない面の双方があって然るべきで、それが当たり前。良いところだけを綺麗に取り繕い、何のデメリットもないと見せることは必ずしも良いことではなく、むしろ怪しまれる可能性が出てくる、とも言えます。

良い面と悪い面、長所や短所のどちらもある。それらのどこをヨシとして、どこをアシとするか。それは市場や受け取る相手(とコンテキストが作用して)が決めること。どちらかを切り取って単純な比較勝負に乗り出すより、どっちも抱えたまま丸ごと勝負する方が、勝ち目がありそうな気はしませんか?

「ワケあり」や「こだわり」ではなく、二面性、ギャップで勝負?

品質は優れているのに割安な、いわゆる「ワケあり」商品が割安な理由、その価格となった背景、事情をきちんと説明すれば売上は伸びますよ、とか、なぜ高価格なのか、そのこだわり、背景をストーリーとしてきちんと説明して、世界観や独自性を理解してもらいましょう、とか。

しっかり情報を練って説明しましょう、一筆添えてもう一勝負しましょうみたいな手法も、日本国内だと2008年とか2010年頃には一般的になり始め、昨今では流石に定番というか、手垢がつきまくったスタイルとなりつつあるように思いますが、一見すると悪い面、短所に思える部分もこの方向で工夫して理解してもらいましょう、という路線も筆者は偏見も込めて正直微妙なのではと思っています。

「先に言えば説明、後から言えば言い訳」とか「不実の告知」みたいなものを回避するために、誠実にきちんと不利益も開示しましょう、重要事項はきちんと説明しましょうというのを否定する気は全くありませんし、それはそれで大事なことなのできっちりやるべきだと思いますが、それを殊更マーケティングやブランディングに活用するというのは不向きでしょう。契約上の事務手続き等では必須だと思いますが、ここで述べたいのはそういうお話ではありません。

筆者としては「二面性」や「ギャップ」と呼ばれるような部分、普段は光が当たらずに隠れている影の部分、意識的に、あるいは無意識的に隠している見られたくない部分がマーケティングやブランディングとして重要になってくるのでは、と考えているからです。

誠実に告知、開示すべき部分や、商品やサービス、ブランドの背景にあるストーリーなんかは、「聞かれれば問題なく答えられる」要素であり、紙面の都合などで取り下げているだけ、あるいは言語化が面倒で作業していないだけとか、発信する当事者としては伝えたいこと、あるいは伝えても構わないと思っていることに該当するでしょう。

結局、社会的にオフィシャルな部分、優先順位の問題はあっても開示できる部分であって、意識的に取り繕っている可能性、脚色や編集を加えている可能性もある部分です。それらを流通して久しいフレームワークに落とし込んで受け取りやすく整えたところで、全体的な印象は大きく変わらないでしょう。

公的な印象、先行するイメージをひっくり返すための身近な例が「ギャップ」です。
もはや一つのジャンルとして定着している「ツンデレ」や、二面性の定番、普段は喧嘩っ早いのに動物には優しいヤンキーとか、表に出ている要素と隠している要素の組み合わせ、落差から生じる意外性を上手に打ち出せれば、総合的な印象を大きく変貌させ得ると思いません?

大手企業のSNS公式アカウントが、「中の人」と称して上手に活用している事例の中にも「ギャップ」に該当するものがチラホラあります。SNSやオウンドメディアという新たなメディアが定着した昨今だからこそ、そう言った切り口から二面性、多角的な姿を上手に見せていく、というのは今後のマーケティングやブランディングを考える上で重要、あるいは定番と化していくのではないでしょうか。

「意外性」と「恥じらい」が大事

大手企業のSNSアカウント等になると話は少々変わりますが、それでも「ギャップ」の基本は「意外と」面白いとか、「意外な一面」が軸になります。

大手企業や公的機関の公式SNSとなると、「真面目そう」とか「固そう」というオフィシャルのイメージが一人歩きするからこそ、一瞬の意外性が面白さやギャップを強調してくれますが、常にそういう発信に終始しているアカウントであれば、そこに「意外性」は生じません。ギャップ、落差を意識しつつ、自然体の立ち居振る舞いでやり遂げなければ、白い目で見られるだけでしょう。あざとさ、わざとらしさには気をつけたいものです。

また、「恥ずかしい」という気持ち、「恥じらい」の有無も欠かせません。
隠しておきたい部分、積極的に開示したくない部分にスポットが当たってしまったら、例えそれが必死に隠すほどのものでなくても、多少は取り乱したり、取り繕ったり、恥ずかしさを覚えるのが一般的でしょう。「できれば見せたくない」ものが、ある一瞬パッと出てしまう。素の瞬間、オフショットのプライベートな空間での出来事こそ、魅力的に感じられるギャップです。

いつでも堂々と見せられる部分であっても、開示後のリアクションが恥ずかしそうにしたりするかどうか、あるいはちょっと照れたりするかどうか。ここがなければ総合的な印象を多義的、多角的にするだけのギャップ、二面性とはならないでしょう。

オフィシャルな印象と、そうでない部分(とのギャップ)。この両方を組み合わせてヨシアシの両方に加えた、更なる多角的な独自性、複合的な価値を「魅力」として作り上げていく。

ディープフェイクや生成AI、加工や編集を嫌う世代がで始めた昨今、こういった「魅力」を念頭においたマーケティング、ブランディングというのも大事になってくる、ような気がします。

秘部をさらけ出す覚悟、胆力が厚みのある魅力に繋がる?

できることなら隠しておきたい部分、秘めておきたい部分こそ、良質なギャップになると筆者は考えていますが、そうした秘密、秘部というのはどういう要素でしょう?

主にネガティブな感情に根差すパーソナルな欲望や衝動、あるいはアンモラルやセンシティブな領域の、暗がりで向き合うべきモノが該当するのでは? 明るいところへ出すには、発信する側もそれを支援する仲介事業者も、受け取る相手も市場や世間も、眉を顰めかねないモノだからこそ、漏れ出てしまったら恥ずかしいと思ってしまうもの。

でも、そのドス黒い秘めたる欲望や野望が、自身の行動や事業の原点、重要なエネルギーになったりしていませんか? 表向きの立派な理由や志と同時に、「異性にモテたい」とか「お金持ちになりたい」みたいな欲求があっても良いと思っています。

表向きの立派な理由や志は、フレームワークや前例踏襲で大体似てくるか、大同小異だったりしますが、隠しておきたい欲望や衝動は、人によって千差万別。両者を組み合わせれば、そう簡単に同じものにはならないはず。衝動の中身も、隠しておきたい理由も人それぞれですしね。

表に出したくない想いが強ければ強いほど、差別化や独自の魅力を裏打ちする、強力な「違い」に繋がります。その肚の括り方、「出してやるぞ」という意気込み、決断こそが厚みのある魅力、あるいは魅力そのものに繋がるのでは。

「出しちゃマズい」影の部分を二面性としてギャップに活かす。
負の要素だと自覚があるその部分も魅力的に捉えてもらったり、理解や納得、共感を得られるようになれば、愛されポイント、愛嬌としてプラスに作用する可能性も十分あります。選ぶ理由を補強する材料として、「価値」を「(複合的な)魅力」へ転化する試みに挑んでみませんか?

覚悟と魅力こそ、伝えよう

フレームワークに一所懸命取り組んで、独自の強みやベネフィットを価値として見出し、それを握りしめて単純比較の勝負へこちらから乗り込むより、デメリットも短所もネガティブな要素も、隠しておきたい秘部、アンモラルだったりセンシティブだったりするパーソナルな影の部分、二面性も含めて、「魅力」として丸ごと発信するカードも用意しておく方が、成熟した市場かつお財布の紐が硬い昨今の市場においては有効なのでは?

発信する本人からすると絶対に出したくない、恥ずかしさを覚える部分だからこそ、そこが親近感に繋がる愛されポイントになったり、万が一の際にも「仕方ないな」と愛嬌だと笑って受け止めてもらえる要素になるかもしれない。

単純なモノとしての価値やコトとしての価値だけでなく、「魅力」を感じて近くに置いてもらう、愛してもらう可能性、選択肢を用意しておけば、価値や独自性だけで選ばれる水準に到達できなくても、複合的な勝負で、他の候補をごぼう抜きする可能性だって十分出てくるのでは。

侘び寂びの国だからこそ、Webマーケティング、ブランディングの世界でも不完全な自然(じねん)、在りのままの姿を幾許かの恥じらいも持って提示する。その覚悟とその上にある厚みのある魅力、複合的な価値こそ、伝えるべき要素なのかもしれません。

長いお付き合いで自己開示、原点開示をサポートします

本当は隠しておきたい秘部や、出したくない本音。それらがマーケティングやブランディングで鍵を握ると言われても肚が決まらない、恥ずかしさが上回ってしまう。そんな方でも大丈夫。月額制Web制作のBBNなら、長いお付き合いを経て、覚悟が定まってからの挑戦もサポート可能です。

一回限りのお付き合いでは難しい原点開示、本心深掘りの言語化、可視化。
BBNと共に、アナタだけの魅力構築に無理なく取り組んでみませんか?

魅力を開示してもらいたい理由は、こちらにも

せっかくご縁をいただいたなら、少しでも長く関わりたい。その理由、その気持ちについてはこちらの記事もご覧ください。

時代を超えて愛されるWebサイトを目指して

「BLUE B NOSE」は時代を超えて愛されるWebサイトをお届けするために、月額制モデルを選択しました。OODAループやPDCAサイクル、データ・ドリブンに基づく継続的な改善を選んだ理由や、当サービスの目標、当サービスの特長を簡単にご紹介します。
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長谷川 雄治
昭和63年生まれ。大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科卒。
2011年からWeb制作に従事。コーディングやWordPressのカスタマイズ等を主に経験を積む。2013年、仮面ライターとして独立開業。マーケティングや企画、上流も下流も幅広く対応。
コーディングとコンテンツ制作の同時提供を考えるヘンな人。
BLUE B NOSEでは開発等を担当。

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