ペルソナは都合のいい人形じゃない

長谷川 雄治
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マーケティングに携わる人にとって、もはや当たり前に思える「ペルソナ」ですが、そんなに実務で役に立っているとは思えないのも、「ペルソナ」。
何故そうなのか。
作家の視点やゲームクリエイター的な観点から浮かんできた素朴な疑問を元に、語ってみました。

お盆休み、いかがでした?
長期休暇を利用して帰省された方、あるいはご家族で旅行やレジャー施設にお出かけした方もいらっしゃるかも知れませんね。
普段と違う場所へ出かけると、思わぬハズレを引くことも。

せっかくのお出かけに水を差すような、価格に見合わないクオリティや、繁忙期の人手不足や、スタッフの経験値不足による微妙なオペレーションに、密かに気を悪くしてしまったというのも、そう珍しくはないでしょう。

昨今の物価高騰や人件費の兼ね合いで、ランチでも千円超えが当たり前のようになってきましたが、その価格に見合う内容だったか、微妙にモヤっとするお盆休みだったかも知れません。

つい最近、消費減税と外食産業の話も盛り上がっていましたが、物価高騰と可処分所得にゆとりが少ない状況で、現状でもこの有り様では、消費減税がどうなろうと今後の外食産業はかなり厳しいのでは。
外部要因もさることながら、現状の緩みが気になります。

また、放っておいても売れそうな商材が、盛大にコケていたというニュースも。
カルビーのポテトチップスを白黒パッケージにしたところ、一部界隈では盛り上がっていましたが、トータルで見るとマイナスだった模様。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC217HL0R20C26A7000000

ただでさえ財布の紐が硬い状況。
圧倒的な認知度やブランド力を誇る商品ですら、些細なボタンを掛け違えると伸び悩む。

そんな状況下で、アナタの商材を売るためにはどうすると良いでしょう?

一つのキーワードが、ペルソナです。
それも、事業者にとって都合よく動かされる操り人形のようなペルソナではなく、自我を持ちそうなほど解像度の高いペルソナでしょう。

アナタが活用しているペルソナの問題点や、なぜ人形ではダメなのかについて、改めてお伝えします。

目次

操り人形なペルソナは、都合が良すぎる

過去に何度か、ペルソナの作り方を解説して来ました。
その中で、キャラクター造形の技法も応用できるかも、とご紹介しています。

もちろん、マーケティングに用いる「ペルソナ」と、創作に用いる「キャラクター」とは同一ではありません。ペルソナはマーケティングやブランディングに用いるため。キャラクターは、物語で特定の役割を担うため。

ただ、「架空の人物を作る」という点においては一致します。
例えフィクションであったとしても、あまりにも現実離れしたキャラクターでは、読み手は受け入れ難いし、ペルソナの場合は役に立ちません。
だから、少しでも現実味のある人物へ作り上げるべく、多様なデータを足して線を書き込み、情報量を増やしていきます。

あまり盛りすぎても現実味を欠いてしまうので、程々のところで一定のコンセプトやテーマを持って、あり得そうなラインを目指して引き算することもありますが、基本的には情報を足し、解像度を上げることとなります。

キャラクター造形でも用いる誕生日や性格、家族構成、学歴や職歴といった来歴、具体的にどこに住んでいるかといった情報も転用できるでしょう。
でも、丁寧に作り上げたペルソナなのに、都合のいい操り人形として動かされがち、です。

ペルソナの出自として、マーケティングをする上で都合よく動かされるのは当然な成り行きですが、作劇的な観点からすると、あまりにも無作法です。
物語の都合上、どうしても作者都合で動機を与えたり、強引に動かさざるを得ないこともありますが、それがあまりにも強引な場合、読み手は作者の力量不足を感じ取ります。
キャラクターが生きていない、作者都合で振り回しすぎだ、と。

ペルソナも、架空の人物ではあるものの、現実味のある人格を目指して作って来た以上、彼らや彼女らには、本人の意思や生活、動機というものが存在するはず。ペルソナの優先順位や「気持ち」を無視して強引に動かしたところで、それはマーケティングを仕掛ける側のエゴに過ぎません。

こうなったのだから、こうなるはず。
その操作に何の疑問も抱かないようであれば、それはペルソナの作り方、もしくは取り扱い方に問題があります。その使い方を前提としたカスタマージャーニーやマーケティング施策では、上手く行かないのも当たり前。

アナタ方が相手にするのは、ペルソナよりも予測が困難で複雑な背景を持つ、実在する人物、それも複数です。「あるある」を煮詰めたような最大公約数に向け、「これなら当てはまるかも」とユーザーインサイトや行動を見極めるためのペルソナなのに、作り手の都合に振り回されるのであれば、ないのと変わりません。

良いキャラクターというのは、キャラクターが勝手に動くんです。
作者の思惑や与えたシチュエーションを超え、作中の世界で動き出すから面白いのであって、作者の主張が強過ぎたり、顔を覗かせるような作品ではダメなんです。

そういう点では、ペルソナも一緒でしょう。
作った側が強引に動かそうとしなくても、ペルソナは勝手に動き出す。
ペルソナに振り向いてもらったり、ペルソナと接点を持ったり。マーケティングやセールスを仕掛ける側に都合よく動いてもらうには、どうお膳立てをすれば良いか。
そこからマーケティングやカスタマージャーニーを考えるべき、です。

ゲーム的には素直過ぎ、性善説過ぎ

作者都合で振り回してはいけないなんて、物書きからするとあまりにも自明な部分ですが、意外と理解されていないようですね。
そして、ゲームクリエイター志望だった身にとっても、一般的なペルソナやカスタマージャーニーというのは、違和感だらけです。

一般的に、人というのは聖人君子ばかりではありません。
その一方で、完全な悪人というのもそれほど多くありません。
基本的には誰も彼もが良い人であり、程々に動物的な本能、暴力性や悪い部分も持ち合わせています。
どんな人間にも三大欲求はあるし、聖も俗もある。汗をかくし、汗以外の分泌物も出すし、匂いもある。
必死に努力することもあれば、とことん怠けたり、疲れたりすることも。

特定の競技を成立させるため、一部を切り取ってモデル化したり、デフォルメ、抽象化を加えた遊びやゲームなら、そうした人間性も、容易に垣間見ることができます。

遊びを設計した側が用意した通り、想定した通りに遊ぶ人もいれば、ルールとしてどこまで容認されるのか、ギリギリの境界線を探るようなプレイヤーも登場します。作り手の想定しない挙動で、バグや穴を探し出し、抜け駆けして不正に得しようとするのも、珍しい現象ではありません。

これらは、都市生活や市場経済という虚構、フィクションにおいても同様です。
建前としては、法の下の平等となっていますが、「法律を知らない奴が悪い」と知識を使って利益を得たり、仮に検挙されても軽微な罪で済むような不正を犯す人もいます。

(目的のためなら)手段を問わず、お手軽に済むズルをしたいと考えるのは、AIも同様です。
『OpenAIのセキュリティ侵害、AIエージェントが「共謀」して数週間活動』
https://news.yahoo.co.jp/articles/1f6291e988a3496ee8f0d72938a229ba95deb8e5

全員が、意図的に抜け駆けするような狡賢さを発揮するとは思っていません。
ただ、体力も含め、有限のリソースを使って最大限の成果、利益を得ようとした場合、誰にも咎められずに不正できるのであれば、そちらの方が高効率です。
だったら、どんなに聖人でも「魔が差す」ことも考えられます。

一人でズルをしたり、複数人で共謀して組織で不正したり。
それをいかに防ぐか、いかに対処するかも、遊びを提供する側にとって必要不可欠な考え方です。

でも、一般的なペルソナの運用方法には、そうした着眼点はあまり見られません。
全てのペルソナが、言われた通りに素直に動く、性善説的な良い子ばかりです。

アナタ自身はどうでしょう?
親や先生、あるいは上司から「こうしなさい」と言われて、言われるがままに動くでしょうか。
時には「うるさいな」と反発したり、「言われたからやる気がなくなった」と天邪鬼さが顔を覗かせたり、「どうにか楽をできないか、誤魔化せないか」とズルを考えたりするのでは?

常に指示した側が想定する正攻法に則り、事前に計画した通りの成果を上げてくれるとは限りません。
ペルソナだって同じこと。
アナタがどんなに懇願しても、内心の自由があるし、反発し得る。おまけに、性悪説な要素も持ち合わせています。

ペルソナは、思い通りに動いてくれるとは限らないし、心の中で何を考えているかも窺い知れない。
それもまた、忘れてはならないポイントです。

都合のいいペルソナ ≠ ユーザー

自社のマーケティング、カスタマージャーニーを考えるためにペルソナを組み立てますが、自社の商材にとって都合の良いペルソナ、思惑通りに動いてくれるペルソナは、ただの操り人形であって、ユーザーや実在する人物ではありません。

マーケティングやセールスとして考えなければならないのは、机上のペルソナを攻略することではなく、その向こうにいる相手、実際にいる人を理解し、適切な訴求方法を考えること、本当に正しかったのかを検証すること。

あまりにも細かな生データをそのまま扱うのは不便だし、個々の特異な事情に目を向け過ぎても応用が効かないので、ある程度抽象化して、最大公約数的なモデルとして取り扱った方が都合がいい。
そうやって生まれたカリカチュアや集合体、概念を偶像化し、顕現させたに過ぎないのがペルソナです。

ペルソナと実在する個人とはイコールではありませんが、ペルソナの向こうには人がいて、心も人格も持っていて、血が通っている。人と大して変わらないものと思って向き合わない限り、実務でペルソナが役に立つことはないでしょう。

先に持って行きたい方向性や結論ありきで、そこに当てはまるペルソナやシナリオを考えたところで、無意味です。ペルソナを通じて、ユーザーはどう考えるか、何に悩んでいるかを具体的に考える。それをやらないのであれば、ペルソナもカスタマージャーニーマップも要りません。

ペルソナも、カスタマージャーニーやシナリオといった武器も持たず、自己都合の事業活動をするとどうなるのか。向かうべき方向も、誰に訴求するべきかという相手も分からないまま、盲目で暗闇を進むようなもの。本当に、それで上手くいく状況なのか、よくよく考えていただきたい。

ままならない厄介さ、難しさに意味がある

ペルソナも、人と変わらない。
意思疎通はできるけど、完全に言う通りにならないという意味では、ペットや肉親、恋人や友達とも似ているかもしれません。

できるだけ寄り添いたいし、理解もしたいけど、100%分かり合うことは考えにくいし、思い通りにならないのも、確かでしょう。それらより思い通りになるはずのAIですら、それ以前は上手く行った同じプロンプトでも、出力を変えたり、個性を出したりしますから。

でも、「ままならない」からこそ、ペルソナを用いる意味があります。
「勝手に動く」レベルまでデータを作り込み、高解像度化することによって、何を気にして、どこで躓くのか。そして、どういうインサイトを抱えているのかも、見通しやすくなります。

「この人だったらどうするか」を考えることにより、ヒントも絞り込みもない状況より、はるかに施策のヒット率、投資の回収効率も高まりますし、上手くいかなかった時も、検討や対策を組み立てやすくなります。

解像度を十分に高められれば、作り手側の「こうなるはず」という思い込みについても、妥当かどうかを検証しやすくなるでしょう。
「この人物が、そう考えるか?」とか「この性格、この経歴で、そうするか?」と。
解像度が低ければ、そうした違和感も見つけられず、誤った仮説検証を繰り返すことになります。

思い通りにならないペルソナに、思い通りに動いてもらうのは骨が折れます。
また、ペルソナ作りに不慣れだと、十分な解像度を持たせたり、実在人物らしさを見極めることも困難です。余りにも理想的過ぎたり、主人公すぎる塩梅になってしまうこともあるでしょう。

「本当にいるかも」と思えるほど良いバランスに落ち着かせ、実際のデータや「あるある」を組み合わせ「それっぽさ」を整えていく。そうすると、実在する人物と同じぐらい、思い通りにならないペルソナが出来上がります。

思い通りにならないからこそ、売り手都合を払拭できる。
ままならない相手目線、顧客目線に立って自社の商材、マーケティングを検討できるようになる。
それが、ペルソナが担う本来の役割なはず。

アナタが思うままにできる召使や操り人形なペルソナなら、要りません。
ペルソナを、アナタの影響下から追い出すこと、突き放すこと。
ペルソナの自由を認めることから、始めましょう。

エゴを捨てる、が出発点

外部環境も相まって、放っておいても売れそうな売れ線商品ですら、躓きかねない現状です。
「こうやれば上手くいく」という、自己都合、自分勝手なやり方では痛い目を見るでしょう。

カルビーのポテトチップスほどのブランド力、商品力であっても失敗するのであれば、比べるべくもないアナタの商材なら、もっと創意工夫が必要です。

だからこそ、思い通りにならないペルソナを作って、アナタの主観、エゴを捨て去ること。
それでも、誰かの思惑に則ってペルソナを作る以上、100%客観的なペルソナにはなりません。それでも何もないよりは遥かにマシ。少しでも先入観を減らすため、主観を抑制するためにも、まともなペルソナを作りましょう。

「自分たちはこう思う」とか、「良い商品です」と投げかけたところで、それを受け止めるか、どう思うかは相手の自由。主従関係もないのに、力尽くで言うことを聞かせるなんて、出来ません。

相手の心や自由を尊重し、それを踏まえてメッセージや施策、戦略を組み立てること。

ペルソナも、ペルソナの向こうにいる顧客やユーザーも。
一人の人格、ままならない存在として、失礼がないよう敬意を払う。

それが全ての出発点。
難しい局面を乗り切りたいのなら、実践的で使えるペルソナを作りましょう。

ペルソナを組み立て、それを活かすWebサイト制作、マーケティングにも取り組みませんか?
具体的な一人の人として向き合うことで、さまざまな課題が解決できるかも。

ペルソナの高解像度化なら、お任せを

ままならないペルソナを組み立てたり、高解像度化したペルソナに合わせたWebサイト制作や、各種マーケティングに取り組んでみたいなら、いつでもお声掛けください。

実在しそうなレベルのペルソナを組み立て、多種多様な課題の解決策が見えるはず。
少しでも効果的で、効率の良い施策をお求めなら、ぜひ私たちにご相談ください。

ペルソナをしっかり作ったら、次はコレ

精度の高いペルソナを作ったら、どんな順番で情報を提示するか、"In other words"シリーズに則って考えてみませんか?

In other words, I love you

noteの方で始めた「SEO・マーケティング 入門 2026」、第二弾。
「今すぐ行動したい人」の手前にいる「知りたい人」にどう向き合えば良いのか。
指名検索というあり得そうなシナリオと組み合わせて、解説してみました。
長谷川 雄治
ノウハウ

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長谷川 雄治
昭和63年生まれ。大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科卒。
2011年からWeb制作に従事。コーディングやWordPressのカスタマイズ等を主に経験を積む。2013年、仮面ライターとして独立開業。マーケティングや企画、上流も下流も幅広く対応。
コーディングとコンテンツ制作の同時提供を考えるヘンな人。
BLUE B NOSEでは開発等を担当。

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