「2026年も、もう10月?」と思っていたら、今月も間も無く折り返し。
まだまだ日差しは暑かったりしますが、朝夕はすっかり秋ですよ。食欲の秋、スポーツの秋、色んな秋があると思いますが、皆さんはどんな秋をお過ごしでしょうか?
私の場合、大抵は読書の秋。大型書店のキャンペーンに乗っかって、ベストセラーに手を出したり、持たざる者の一人として、他の人があまり選ばなさそうな、角度の違う知識を追い求めたり。
クリス・ヴォスやタール・ラズの共著『逆転交渉術――まずは「ノー」を引き出せ』(佐藤 桂訳 早川書房)と出会ったのも、そんな経緯から。
交渉や営業のテクニックとして、イエスや肯定ではなく、むしろノーや拒否を引き出そうというのは、中々に斬新なアプローチです。
普通なら、とにかくイエスを引き出し、嫌な気持ちにさせて断らせる隙を作らせてはならないと思ってしまいますが、断る自由を相手に差し出し、実際に一度拒否してもらうというのも、意外と効果的だったりするのだとか。
容易に受け取ることは難しい考え方だと思いますが、そこにBNIのようなリファーラルビジネスの根底にある「ギバーズゲイン」や、アダム・グラントの『GIVE & TAKE(ギブアンドテイク)「与える人」こそ成功する時代』(楠木 建訳 三笠書房)を補助線として引っ張ってくると、意外な姿が見えてきます。
今回は、そうした書籍から見えてくる「ノー」を引き出すメリットや、一度断ってもらうという効果、あえて押さずに引く、譲ることの強さについて、ご紹介しましょう。
拒否も、相手の大事な権利
ビジネス、特にマーケティングやWebサイトの設計なんかに従事していると、忘れてしまいますが、アプローチをかける相手、ユーザーにも当然のように内心の自由があり、拒否する権利も断る自由も認められています。
アナタがモノを買って欲しい相手というのは、お金を持っているだけの哲学的ゾンビではなく、自分で考える力も、行動する能力もある生きた人間。理性的なところも、動物的な本能も併せ持つ存在です。
それを忘れて、「言われるがままに動くはず」は通用しません。
肯定しか許さないみたいな発想で、「こう働きかけたらこうなるはず」と熱心に期待したところで、どこまで行っても他人です。どうするかは本人にしか決められません。
『7つの習慣』でいうと、関心の輪の中の存在です。「こうあって欲しい」と思っても、その期待が叶うとは限らないし、「思い通りに動く」と思えば思うほど、ただのストレスにしかなりません。
「こんなにやってあげたのに」と思うこともあるかもしれませんが、自己完結可能な「影響の輪」を飛び出している以上、執着しないこと。
拒否もノーも、お断りも。
全て、相手に認められた大切な権利であり、尊重されるべき自由です。
相手を大切に思うのなら、拒否も容認し、勘定に加えましょう。
断ってもらうのも、一つのギブ
こちらから積極的に働きかけ、必死に「イエス」を引き出そうとする行為は、もしかしたらテイクに相当するかもしれません。
その一方で、どこかで「ノー」と断ってもらったり、「いつでも断ってもらって良いので」と譲歩するのは、こちらから何かを手放し、相手に差し出すという点でギブと言えるかもしれません。
ただ、何かを差し出したのだから、それなりのリアクションをして欲しいみたいな「返報性」を期待するのも、「関心の輪」に執着してしまうことになるので、あまり良くない考え方でしょう。
それでも、「何も手放さない」と何も手に入れられないし、与えたものが巡り巡って手元に返ってくる可能性が高いのなら、「イエス」を引き出そうとテイカーになるよりは、「断ってもらっても構わない」と断る自由をギブする。押し出す形の自己主張をするのではなく、「どうぞ」と一歩引いて譲るようなギブをしてみる。
もしかしたらそれもある種の「ギバーズゲイン」、「与える人」になる方法と言えるかもしれません。
「与える」は難しくても、「譲る」ことで手放したくない「それ」よりも大きな何かが期待できることも。
海老で鯛を釣るというか、肉を切らせて骨を断つというか。
ちょっとした小さなテイクで大きなリターンがあるかもしれないと、淡い期待を抱く分には、「ノー」を引き出すというのは、そこそこ効果的な考え方なのかもしれません。
ちょっと引くから、相手は能動的に関与する
物理的にも、心理的にも、非常に興味深いんですが作用、反作用というものが存在します。
押せば引く、追いかければ逃げられる。「勉強しなさい」といわれれば、「うるさいな」と反発してしまいますが、「どんどん遊べ」といわれると、かえって白けてしまうのでは。
相思相愛の中であっても、追いかけるのが好きなのであって、追われるのは嫌いということも、珍しくはありません。「こうしたい」と働きかけても、反作用があったり、全然違う反応が返って来る。
そこには物理的な法則もありますが、心理的な駆け引きの妙というのも関わってきます。
つまり、相手のギブを引き出したいからと、こちらから積極的に「イエス」をテイクしようと思っても、相手はますます逃げ腰になって、遠ざかっていく可能性があるということ。受動的な「イエス」では、その後のロングエンゲージメントは期待しにくいでしょう。
相手に能動的に関わって欲しいのなら、相手が「自分で選んだ」と思えるように工夫すること。
相手が一歩前に進むようにしたければ、こちらから一歩下がって譲ればいい。相手が前に進めるように、ギブしてあげる。
こちらから意図的に譲り、引くことによって相手の能動的な関与、前向きな関わり方を誘発する。
相手にも小さな主導権を渡しつつ、トータルの大きな主導権はこちらが持つ。
一見受動的に見えるリードも、マーケティングやWebサイト設計に必要な考え方じゃないでしょうか。
とにかくプッシュする定石も確かに大切で、成功事例も多々ありますが、持たざる者が「みんなと同じ」では埋もれるばかり。時には手を替え品を替え、そうした引き気味のアプローチを検討してみても良いのでは。
ちょっとぐらい譲っても、大丈夫
「断ってもいい」を設計に組み込むと、確かに囲い込みが弱まる分、取りこぼしは出るでしょう。
押しが若干弱くなる分、「どうしようかな?」と迷っている人は、「やっぱりいいや」と離れていく可能性も高いです。
でも、それで離脱する人は無理に追いかけなくて大丈夫。
本来伝わるべき人じゃなかった可能性も、考えられるからです。
本当に必要としている人なら、「余計な圧をかけられないでいい」と安心してくれます。
ちょっとぐらい譲歩して、相手に主導権を委ねる形で引き気味に構えたところで、大きな目的は必ず果たせます。
多少目減りしたり、譲ったりしても、そこでビビって狼狽えないこと。
譲っても堂々と構えるだけの胆力を身につけること。
「何も手放さない」と肩肘張って立つより、「ちょっとぐらい大丈夫」とゆったり構えてレジリエンスを効かせる方が、余裕のある大物っぽく見えたりします。
潤沢なリソースを持たない持たざる者だからといって、堂々と構えちゃいけない理由は一つもありません。威風堂々、でっかく構えましょう。
断る自由をギブしよう
最初に、「断ってもいい」という選択肢を相手に差し出しましょう。
それでいて、実際に「ノー」と拒否してもらうのも良いかもしれません。
相手に能動的に関与してもらい、小さな主導権を譲りながら、相手の選択を尊重する。
断らせてあげる、その自由を譲ってあげる。
それもある種のギブといえるでしょう。
ギブできる、与えられるってめちゃくちゃ強いやり方です。
譲れる強さ、目先のギブを設計して、やりたいことに繋げましょう。
サイト設計やマーケティングにも、ギブを
ペルソナを都合のいいイエスマンに仕立てたり、ファーストビューから矢継ぎ早に「選んで欲しい」と圧力をかけるようなやり方だと、「ギブ」からは程遠いと言えます。
相手の自由な意思、拒否する権利も尊重し、その上でこちらのやりたいことも実現する。
それをやるためには、サイト設計やマーケティングにも「ギブ」の発想、一歩引いて譲るという考え方が不可欠です。
消極的に思える「譲る」を駆使したWebサイト制作、マーケティングに私たちと取り組んでみませんか?
少しでも興味があるという方がいらっしゃいましたら、いつでも気軽にお問い合わせください。










